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『学園LME』 生徒会室の扉の前に立ち、少年は眉をしかめた。 「……生徒会室は別校舎ってどんだけ不便な学校なんだよ!?」 というのは、生徒会室を探し続けて1週間……迷い続けたことへの負け惜しみのような、誤魔化しのような言葉である。 「……」 手のなかのメモを再度確認する。 『ショーちゃんへ お話ししたいことがあります。2時間目終了後、高等部生徒会室へ来てください。 * 生徒会室は隣の校舎の6階にあります。 * 高等部の校舎4階の渡り廊下から隣の校舎へ来ることができます。 キョーコ』 (………相変わらず、やたら丁寧な説明だな。) 内心、助かった…と胸を撫で下ろす。この説明書きがなければ、きっといまだに辿り着けなかっただろう…… もう一度、扉に眼を移し、意を決してドアノブに手をかけた。 ―――ガチャッ 木の扉を開きなかへ入ると、キョーコが机に向かい、プリントの束に眼を通していた。 「…よぉ……話。聞かせてもらいに来たぜ。」 キョーコは顔を上げ、強い瞳でしっかりと頷いた。 「うん。」 白い床を見つめながら、蓮はゆっくりと歩みを進めていた。 「………」 『京都の学校はすべて調べたが……残念ながら、それらしい人物はいなかったよ。』 『……もう一度、一から調べ直すか?』 『……もしくは、手がかりから考え直してみるか?なにか見落としてるかもしれないし。』 先ほどの社の言葉を思い出す。 「……手がかり…か………」 手のなかのアオイ石を見た。 (確かな手がかりは、この石と文字が滲んでしまったメモ……) 滲んだメモから辛うじて読み取れたのが「京都」の文字だった。 「………」 知らず、重いため息をもらす。 (……他にあるとすれば………) 記憶を手繰り寄せる。 ――あの日。 ひどく重い心を抱え、脳には濃い霧がかかり目の前が暗かった。 信号が変わったことにも、急発進の車にも気づけず……突然、強い衝撃を全身に受けた。 視界が完全に閉ざされ、全身の感覚が鈍い……どこかが痛いような……なにかが失われたような……… そんななか…そのまま消えても、構わないと思った。 そう思ってしまうほど、心が疲れきっていた。 しかし、ただ騒然とする人の群のなかから、一人の女の子の声が彼の脳に響いた。 『大丈夫ですか!?』 少女はなんの抵抗もなしに、血まみれのその身体に触れた。 『どなたか、救急車を呼んでください!!』 幼さの残る声の呼びかけに、誰かが返事をした。 『大丈夫ですよ。いま、救急車を呼んでもらいましたから。』 小さな温かい手が、血で濡れた額にはりついた髪をどかした。 『しっかりしてください。…クオン・ヒズリ……』 『………』 無垢な優しい声音に、ふいに名前を呼ばれ、泣きそうになった。 しかし、涙はおろか、声も出ず、意識は遠退いていった…… そこまで思い出して、眼を見開く。 (……ちょっと待て、俺!彼女の声が最上さんになってるじゃないか!!……触れたときの香りまで………) 額に手をあて、頭を軽く横にふった。 「なんて恐ろしい病気なんだ………過去の記憶まで都合のいいようにすり替えてしまうとは………」 (やはり、彼女を見つけるまで恋なんてするべきじゃなかった……記憶のなかの手がかりまで侵食されていく………) ―――恋は盲目。 “真実”までも隠してしまう。 |
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